換気をすると、せっかく冷やした空気や暖めた空気が外へ逃げてしまいます。換気は必要だけれど、冷暖房の効率は落としたくない。この悩みを解決するために、空調設備と組み合わせて使われるのが「全熱交換器」です。この記事では、全熱交換器の仕組みとメリット、よくある誤解、長く使うための注意点を、専門知識がなくても分かるように説明します。
全熱交換器とは
全熱交換器は、換気のときに捨てる空気の熱を回収し、取り入れる空気に移してから室内に送る換気設備です。「熱交換型換気扇」と呼ばれることもあり、メーカーごとの商品名で知られている場合もあります。
「全熱」とは、温度に関わる熱(顕熱)と、湿気に関わる熱(潜熱)を合わせたものです。つまり全熱交換器は、温度だけでなく湿度も一緒に受け渡します。温度だけを交換する機器は「顕熱交換器」と呼ばれ、区別されています。
知っておきたいポイント
1. 空気は混ぜずに、熱と湿気だけを移す
全熱交換器の中には、特殊な紙などでできた熱交換素子が入っています。外へ出す空気と外から入れる空気は、この素子の中の別々の通り道を流れます。空気そのものは混ざらず、仕切りを通して熱と湿気だけが移動する仕組みです。
夏であれば、外から入ってくる暑く湿った空気が、室内から出ていく涼しく乾いた空気に熱と湿気を渡します。その結果、室内の状態に近づいた空気が入ってきます。冬は逆に、出ていく空気の暖かさと湿気を、入ってくる冷たく乾いた空気が受け取ります。
2. 冷暖房の負担を減らせる
外の空気をそのまま入れる場合と比べ、室温との差が小さくなるため、エアコンが調整しなければならない熱の量が減ります。冷暖房にかかるエネルギーを抑えられ、必要なエアコンの能力を小さくできる場合もあります。
換気による温度の変化がゆるやかになるので、給気口の近くで暑さや寒さを感じにくくなる点もメリットです。
3. 空調設備と組み合わせて使う
全熱交換器は換気のための機器で、それ自体に部屋を冷やしたり暖めたりする力はありません。エアコンなどの空調設備と一緒に使うことで効果を発揮します。オフィス、店舗、学校、病院など、人が多く換気量が必要な建物で広く使われています。
注意点・よくある勘違い
熱を100%回収できるわけではない
回収できるのは熱の一部です。どの程度回収できるかは機種や運転条件によって異なるため、カタログに記載された効率を確認しましょう。全熱交換器を付ければ冷暖房がいらなくなる、というものではありません。
フィルターと素子の手入れが必要
外の空気を取り入れるため、フィルターにはほこりや虫などがたまります。目詰まりすると換気量が減り、熱の回収効率も下がります。フィルターの清掃と、熱交換素子の点検・清掃を定期的に行うことが大切です。手入れの方法と頻度は、機種の説明書に従ってください。
向かない場所がある
湿気を移す性質があるため、浴室のように湿気の多い場所や、厨房のように油を含む空気が出る場所には適していません。においの強い場所も、別の換気方法を選ぶのが一般的です。
季節によっては熱交換しないほうがよい
春や秋など、外の空気のほうが過ごしやすい時期は、熱を回収せずにそのまま取り入れたほうが効率的です。多くの機種には、熱交換をしない「普通換気」のモードがあります。自動で切り替わる機種もあるので、設定を確認しておきましょう。
まとめ
- 全熱交換器は、換気で逃げる熱と湿気を回収する換気設備
- 空気は混ぜずに、熱と湿気だけを受け渡す
- 冷暖房の負担を減らし、省エネにつながる
- 冷暖房の機能はなく、空調設備と組み合わせて使う
- フィルターと素子の定期的な手入れが欠かせない
換気と省エネを両立させたい建物では、検討する価値のある機器です。